食品表示作成の実務で大事な4つの視点

By | 2013年9月4日
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201309

最近はよく、「食品表示に関するニュースを見るようになった」と言われることが増えたと思います。同時に、「食品表示の担当部署になってしまった」という方にも会う機会が増えました。そこでよく私が講演やセミナーでお伝えしている内容について、簡単なまとめを書いてみたいと思います。

ラベルバンクでは食品に関わる事業者様に対し、食品表示に関わる用語のデータベースをもとに、食品表示作成支援のシステムを開発し提供しております。またその支援の一環として、品質保証業務のうち食品表示に関わる業務のアウトソーシングをサービスとして提供しております。このように食品表示の仕事に携わっておりますと、もちろん失敗をすることも多くあり、「なぜ気づかなかったのか、なぜ事前に把握できなかったのか。」こう思うことはいくつかありましたので、これらの経験から、食品表示作成の実務で大切な視点をまとめるようにし、皆様にお伝えするようにしております。

1、一律でかかる規則と、条件付でかかる規則


原材料名を表示する、特定原材料(アレルギー物質)を表示する、賞味期限の書き方はこう、といったものは、一律でかかる規則の代表例です。どんな食品を作っても、こうした「表示の仕方」というものはありますが、そうしたものとは違うものがあることの理解から、食品表示の理解は始まると思っています。

例えば「国産大麦使用」のような表示です。仮に大麦のうち60%が国産であれば、「国産大麦60%」と表示するという規則があるのですが、これは「特色のある原材料」を使用していることを表示するという条件ではじめて対象となる規則です。他社の商品を参考に食品表示を作成する場合もあると思いますが、仮にその商品に「国産大麦使用」と書いてあれば参考になるかもしれません。

もしそうでない場合などは、「この商品の基本的な規則については参考になった」「しかし、自社商品が他に何を表示するかで、守らなければならない規則も増えることがある」という視点を持つことがまず求められるかと思います。特に地域農産物を活用した商品などでは、食品表示のミスの多くは、安易に他社事例をまねてしまうことから起きているものも多いと感じます。

2、安全性や健康にかかる表示と商品選択にかかる表示


今度は消費者からみた表示の視点です。

消費者は、表示を「安全性にかかるもの」と「商品選択にかかるもの」と大きく2種類に分けてみていると思います。この視点は消費者庁でも明確にされ、新しい食品表示法の考え方の基本にすえられていることが確認できます。安全性や健康への影響にかかる表示の代表例は、アレルギーや栄養成分などがあるかと思います。

また先ほどの事例ででた「国産大麦使用」などは、安全性の問題でもなく、一般的には健康に影響がある表示ではないと思います。ただし、商品の選択上で重要な表示になっているものです。人によりますが、「国産大麦使用の商品は、他の産地のものよりもよい」、というイメージをお持ちの消費者であれば2〜3割高い価格を支払ってでも購入すると思います。

ここが、食品表示上でのミスを防ぐための視点にもなります。
例えば安全性など、健康への影響の度合いが強い表示のミスであれば、それを第一に防ぐようにと意識が集中すると思います。多くの会社で「アレルギー表示」の管理が重要視されているのは、その影響の大きさからでしょう。

また自社商品のセールスポイントの中心となっている表示、例えば「ポリフェノールがたっぷり」など、お客様が支払う対価に大きな影響を与えている表示についても、重点的に管理する必要があります。こちらの例では、栄養成分の強調表示基準からも外れており、実質上の規則はありません。ただ、実証することを求められることもあります。

このように、消費者からみたときの食品表示には、大きく2つの側面があると考えると、管理の優先順位で失敗することも少なくなると思います。

3、表面から分かる表示ミスと、規格書を確認してはじめて分かる表示ミス


一括表示を見てぱっと分かるミスもあります。
例えば添加物などで、「保存料」や「甘味料」とだけ書いてある場合などです。賞味期限の記載方法や、食品と添加物の順序、アレルギー表示の方法についても同じことが言えるかもしれません。いつも同じ産地の原材料を使用していれば、「おや、今回は産地に間違いがある」と気づくこともあるでしょう。

ただ問題は、「ぱっと見ただけでは分からない表示ミスもある」ということです。

販売期間の途中で原材料が変更されている場合も多いと思います。そしてそれらの情報をまとめる「規格書(原材料の配合割合や産地、アレルギー情報、添加物の用途名などが書かれた書類)」も、その期間の途中で内容が変わる場合も多くあると思います。実務上で神経を使うのは、「以前のファイルと変更された箇所はあるか」を確認することだと感じます。この変更点を見落とすと、何年にもわたって産地表示のミスに気づかないということがよくあります。そして担当者が変わるなどのタイミングで、表示との不一致に気づいてしまうケースになります。

今回の視点でいう「安全性など健康への影響に関わる表示」として、例えばアレルギーなどのミスの場合は、実際に食べて症状がでてしまった人からのクレームで気づくこともあると思いますが、「商品選択に関わる表示」であれば、他の誰かに指摘を受けるまでなかなか気づくことはないと思います。視点を組み合わせながら、定期的に重点的に確認するポイントを決めておくことが、食品表示のミスを減らすうえでのポイントになると思います。

4、人為ミスと仕組みのミス


最後に、ミスは必ず起きるという前提で業務を進めるにあたり大切な視点をご紹介します。タイトルのとおりミスの主体を分けて考え、それを管理することです。

例えば食品表示の知識に詳しい担当者が、急に退社したとします。他に詳しい知識をもつ人もいないまま、それでも食品表示作成をしなければ商品の販売ができない状況で、知識が足りないために起こした間違いがあったとします。これは、人為ミスでしょうか。それとも、仕組みの問題でしょうか。

例えば食品表示を3人で確認していた場合、3人目の人はどこまで細かく見るでしょうか。もしも一番詳しい人が前工程で確認していた場合は、「大丈夫だろう」と気が緩むこともあります。この時点では人為ミスかもしれませんが、これを頻発してしまうようでは、ミスを防ぐ仕組みがないのと同じだと思います。大切な点は、「いかに人為ミスを防ぐ仕組みを構築できるか」にあると思います。紙に線を引いて、ミスの内容をプロットしていくと、最初は人為ミスが多くなるかもしれません。
これをいかに仕組み側に移すことができるか、です。
なぜなら、仕組みのミスは比較的改善しやすいと気づくからです。

最後の話は、どんな仕事にも言えることかもしれませんが、できれば回避可能なミスを多く想定していくことだと思います。回避が難しいのは、知識不足など個人の能力によるもので、かつ突発的なのものだと思います。それ以外の問題は、組織の問題として対応を準備するのがよいと思います。


以上が、4つの視点です。セミナーや講演では、これを図にするなどして話をしていますが、実際にやるのは私自身もなかなか難しいと感じるものです。
いろんな勉強をしますが、実務は理屈ではない、と思うこともよくあります。

ただ、こうした理屈も、混乱したときには役に立つこともありますので、何かのときの参考程度にしていただけると嬉しく思います。


食品表示作成・チェックサービス(国産食品、輸入食品):
国内で製造し国内で販売する食品、海外で製造し国内で販売する食品向けの食品表示サービスを提供しています。新しい食品表示基準への改版業務、現行のラベルのダブルチェック、添加物やアレルゲン等の社内チェック基準づくりをサポートいたします。
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川合 裕之
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2019)
【寄稿】
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~
・2014年~連載『季刊シール&ラベル』(日報ビジネス)食品表示にまつわるワンポイントアドバイス
・~2010年連載 『フードプラスワン』(日報アイビー)食品表示ワンポイントレッスン
・~2010年連載 『ヘルスケアマーケットレビュー』(大阪産業創造館)
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演実績
・2019年9月10日 新しい食品表示基準への対応と実務上の大切なポイント~添加物、アレルギー、栄養成分、原料原産地を中心に~
 山口県商工会連合会様主催。
・2019年7月10日、7月11日 食品表示基準に基づいた実務の重要なポイント
 奈良県観光土産品公正取引協議会様主催。
・2019年6月18日 輸出入食品における食品添加物の徹底研究~主要各国の食品添加物制度の調査と実務上のポイントについて~
 品質保証研究会様主催。
・2019年5月13日 新食品表示制度の基本~配合表を見ながら考える、新基準表示のチェックポイント~
 日報ビジネス株式会社様主催。
・2019年4月19日 表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント
 日本食糧新聞社様主催。
・2019年2月26日 すべての加工食品が対象~原料原産地表示のポイントについて~
 兵庫県指定観光名産品協会様主催。
・2019年2月22日 食品表示作成・チェックにおける実務上の大切なポイント~アレルゲン、栄養成分、原料原産地表示などを間違えないために~
 公益財団法人 山口県予防保健協会、山口県、一般社団法人 山口県食品衛生協会様主催。

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