食品の新たな機能性表示制度の検討会報告書公表

By | 2014年8月1日
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2014年7月30日、消費者庁より「国ではなく企業等の責任において科学的根拠をもとに機能性を表示できる新制度」について、販売前届出・公開制などの方針案をとりまとめた「食品の新たな機能性表示制度検討会報告書」が公表されました。今後、パブリックコメントによる意見募集が実施される見通しです。

新制度の概要について


新制度では、企業の責任において科学的根拠をもとに機能性表示が可能になります。ただし科学的根拠等の資料を消費者庁に対し販売前に届出する必要があり、また消費者庁は受理した科学的根拠等の資料を国民に公開することが前提になる制度です。特定保健用食品のような事前規制型ではないため、「食品表示基準」に規定したうえで販売後の収去や監視を行うといった運用になる見込みです。

1 対象食品:食品全般(アルコール含有飲料、ナトリウム・糖分等を過剰摂取させる食品は除く)

2 対象成分:作用機序が考察され、直接的又は間接的に定量可能な成分
   ・食事摂取基準に摂取基準が策定されている栄養成分については、今後さらに慎重に検討
   ・機能性関与成分が明確でないものの取扱いについては、制度の運用状況を踏まえ検討

3 対象者:生活習慣病等の疾病に罹患する前の人又は境界線上の人(疾病に既に罹患している人、未成年者、妊産婦(妊娠計画中の者を含む)及び授乳婦への訴求はしない)

4 可能な機能性表示の範囲:部位も含めた健康維持・増進に関する表現(疾病名を含む表示は除く)

(参照:消費者庁「食品の新たな機能性表示制度検討会報告書」)

新しく表示をする際に必要な科学的根拠


まずは科学的根拠が必要です。
安全性の面では「機能性関与成分を中心とする食品について、食経験を評価」した情報(日常的な摂取量、食品の販売期間・販売量、機能性関与成分の含有量、摂取集団、摂取形状、摂取方法、摂取頻度等)、もしくは安全性試験に関する情報などが必要となります。

機能性の面では大きく2つの要件があり、「最終製品での臨床試験(特定保健用食品の試験方法に準じたもの)」もしくは「機能性関与成分に関する査読つき論文のシステマティックレビュー」などが必要になります。臨床試験の場合には経過措置期間つきでの研究計画の事前登録と査読つき論文による報告、またシステマティックレビューにおいては査読付き論文からの表示内容への支持などが要件になりますが、これらの情報が消費者庁により「公開される」点を考慮しておくことがポイントになると思われます。

制度の特徴と表示実務への影響


新制度の特徴は、下記のように3点あると思われます。

・公開による高い透明性から、消費者の科学的根拠に対する知識が向上する
・食品表示基準への規定により、機能性表示に対する品質保証業務が明確になる
・科学的根拠の要件が食品形態によって異なり、商品開発計画に影響が生じる

例えば最終製品による臨床試験が行われていない場合は、対応されていないことを届出する必要があり、その情報が公開されることになりますので、
なるべく臨床試験のできる商品での届出を求める声が増えると思われます。昨年末に消費者庁より「効果効能の裏付けとなる合理的根拠を示す実験結果、データ等をウェブサイト上に適切に表示することが望ましい」と発表されたことを受け、最終製品の臨床試験を実施した企業は、機能性表示の範囲を超えない程度でウェブサイトでの情報発信が進むことも想定できます。

また1度の臨床試験では客観性の確保に課題があるとされる場合も想定し、ほかの論文をまとめるなどシステマティックレビューの併用などの情報公開も進みますので、消費者の科学的根拠に対する知識が向上し、商品選択の眼が厳しくなると考えられます。

同じことは企業の品質保証の現場にも言えます。企業にとっては食品表示基準に規定されることから、日常の品質保証の業務のなかで、仕入れ商品の科学的根拠に対し一定の判断基準が加わることになるため、これまでと比べて検査や確認が容易になるものと思われます。これまで、機能性をぼかして販売している健康食品についても、新制度と同様の要件での商品審査が実施される可能性を考えると、今後届出をするかしないかに関わらず、科学的根拠をベースに、新商品開発ないしリニューアルの計画を立てることが求められるものと考えられます。

今後の予定


新制度は近くパブリックコメントの募集を受け、その後再度検討を行った後に、今年度中に正式に発表される見込みです。臨床試験に関する研究計画の事前登録要件等については経過措置期間が設けられるため、これまでに実施した試験結果をもつ企業にとっては、これを活用できる見通しです。

新制度を機に、食品業界全般で科学的根拠に対する知見が高まり、今後のよりよい製品づくりのきっかけにしていくことができればと思います。

※ システマティックレビュー…対象成分の機能性について、様々な論文・データを収集し、結論をまとめたもの。

 


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川合 裕之
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2019)
【寄稿】
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~
・2014年~連載『季刊シール&ラベル』(日報ビジネス)食品表示にまつわるワンポイントアドバイス
・~2010年連載 『フードプラスワン』(日報アイビー)食品表示ワンポイントレッスン
・~2010年連載 『ヘルスケアマーケットレビュー』(大阪産業創造館)
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演実績
・2019年6月18日 輸出入食品における食品添加物の徹底研究~主要各国の食品添加物制度の調査と実務上のポイントについて~
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・2019年5月13日 新食品表示制度の基本~配合表を見ながら考える、新基準表示のチェックポイント~
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・2019年4月19日 表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント
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・2019年2月26日 すべての加工食品が対象~原料原産地表示のポイントについて~
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・2019年2月22日 食品表示作成・チェックにおける実務上の大切なポイント~アレルゲン、栄養成分、原料原産地表示などを間違えないために~
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