食品の新たな機能性表示制度について(3)

By | 2014年5月2日
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「消費者意向等調査結果」の発表


2014年4月4日、消費者庁「食品の新たな機能性表示検討委員会」において3月実施の消費者意向等調査の結果が発表されていますので、こちらでご紹介します。消費者の求める情報そのままということもあり、大事なことですので、背景から改めて整理します。

「いわゆる健康食品に関し、企業等の責任において科学的根拠をもとに機能性を表示できる新たな方策について、今年度中に検討を開始し、来年度中に結論を得た上で実施」と、規制改革実施計画(平成25年6月14日閣議決定)、日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定) にて決定されたことが始まりです。

そして「消費者の誤認を招かず、消費者の自主的かつ合理的な商品選択に資するような機能性表示制度を検討するための基礎資料を得ること」を目的に、2つの調査を実施することになりました。

1点目が「米国ダイエタリーサプリメント制度に関する課題等整理」、そして2点目が「機能性表示に対する消費者の読み取りに関する実態調査」であり、今回の「消費者意向等調査結果」とは、この2点目のうちの1部(「グループヒアリング」と「インターネット調査」の2つの方法が提示されています)に該当するものと思われます。

調査概要と報告書の全体像


調査は、「健康食品の誤認率が高いと想定される集団を含む集団」として「3,000名(15?79歳の男女を全国の人口構成に合わせて割当抽出)を対象に行われています。また対象者を、「?20?64歳(疾病なし)」「?20?64歳(何らかの疾病あり)」「?65歳以上」「?15?19歳」「?健康食品を摂取している中学生以下の子どもを持つ者」「?妊娠中・妊娠計画中の者」と、6つに群分けされています。報告書内に調査内容についても記載されていますが、ここでは報告結果の構成(目次)をみることで、今後どんな準備が求められるかが参考になるのではないかと思います。

・診断又は疑いのある疾病
・最近1年間の「健康食品」の摂取状況
・過去1年間に「いわゆる健康食品」を摂取した者における「いわゆる健康食品」に対するイメージ
 (1)?(5)(「試験などで安全性が証明されている」
 「食事では摂取しにくい栄養成分を摂取することができる」
 「製品パッケージの表示を、しっかり見て選ぶ必要がある」等と思う者の割合について、グループ別に報告)

・過去1年間に「いわゆる健康食品」を摂取した者における摂取頻度と摂取目的
・過去1年間に「いわゆる健康食品」を摂取した者における購入時に重視する点(1)(2)
 (「厳しい品質管理のもと製造・販売されていること」、「ヒトで効果が確かめられていること」、
 「原材料が天然・自然由来のものであること」を重視する者の割合について、グループ別に報告)
・「健康食品」を摂取させている中学生以下の子どもの有無
・中学生以下の子どもに摂取させた「いわゆる健康食品」の種類と摂取される頻度と目的
・「いわゆる健康食品」に機能を表示できないことの認知度
・「いわゆる健康食品」に機能性を表示する際に必要な表示事項
・米国のダイエタリーサプリメント制度に基づく表示に対する印象
・「いわゆる健康食品」に機能性を表示する際の表示の在り方と最低限必要な試験

ヒト介入試験の必要性


事業者側にとって、もっとも準備に時間のかかるものの1つが「試験」ではないかと思います。
報告書の最後のページは、「いわゆる「サプリメント」形状のもの(錠剤等)」「サプリメント形状ではない加工食品(お菓子等)」「生鮮食品(野菜・くだもの等)」といった3分類の食品形態に対し、それぞれ「試験管試験」「動物実験」「ヒト観察研究」「ヒト介入試験」の必要性を質問したものの結果が記載されています。

「いずれの項目でも、「ヒト研究」を最低限必要と思う者(「ヒト介入試験」又は「ヒト観察研究」と回答した者)は全体の6割以上であった。グループ???において、「いわゆる『サプリメント』形状のもの」について「ヒト介入試験」が最低限必要と回答した者の割合は、「サプリメント形状ではない加工食品」や「生鮮食品」に比べて有意に高かった。」

表示の裏づけとなる合理的な根拠と、統計的な客観性の確保


この報告書最終ページから、消費者(今後の制度)の求める「科学的根拠」のレベルについて、推測することができるかと考えます。質問内でもっともレベルの高い「ヒト介入試験」については、「例)調査参加者を対象に、ある成分又は食品を一定量摂取してもらう群と、摂取しない群に分け、その摂取が健康状態におよぼす影響について、直接評価する研究」と定義されています。

また、この報告書の調査概要部分に、「(中略)グループ?(20?64歳(疾病なし))を対照群として、要配慮者グループ???との比率の差の検定を行った」「(中略)同一グループ内で比率の差の検定を行った」「統計学的有意水準は5%(両側検定)とした」といった「統計解析」に関する記載があります。
不当表示についての1つの考え方となる「不実証広告規制に関する指針(消費者庁)」では、例えば体験談やモニターの意見等などの表示をする際に必要な合理的な根拠として「これら消費者の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要がある」といった説明がされています。

もちろん、冒頭で触れた「グループヒアリング(本調査の基礎的知見となったもの)」の結果が同委員会のページで公開されていない点も、考慮に入れておく必要はあります。いずれにしても機能性表示に必要な準備について検討する際に、この報告書は大変参考になる情報が盛り込まれていると思いますので、まだ確認されていない方は、ぜひ一度消費者庁のページで参照していただくことをお勧めします。

また機能性表示に限らず、誤認などの不当表示を生まないために必要な「表示の裏づけとなる根拠」を考えるときにも、このような試験や調査、報告の方法について確認しておくことは大切なことではないかと思います。

参照:第4回食品の新たな機能性表示制度に関する検討会(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index19.html

※2014年5月8日(木)追記


5月2日、第5回検討会の資料が発表されました。科学的根拠についての方針案がありますので、追記いたします。

【対応方針(案)の要点】

◇対象成分は「直接的又は間接的に定量可能な成分」。
 ただし栄養機能食品と特定保健用食品の対象栄養成分(食事摂取基準のあるビタミン、ミネラル)は対象外。

◇新制度においては、表示しようとする機能性について
 下記(1)(2)のいずれかを行うことが必須となる。

(1)最終製品を用いたヒト試験による実証
  ・ヒト試験の方法は特定保健用食品の方法に準じる。
  ・UMIN臨床試験登録システム等への事前登録が必要。
  ・CONSORT声明等に準拠した形式での査読付き論文での報告が必要。

(2)適切な研究レビュー(システマティックレビュー)による実証
  ・サプリメント形状ヒト介入試験、その他加工食品、生鮮食品においては、ヒト研究(介入試験又は観察研究)で肯定的結果が得られていること。
  ・検索条件や採択・不採択の文献情報等、出版バイアスの検討結果等について詳細に公表する必要がある。
  ・表示しようとする機能について、査読付きのヒト研究論文がこれを支持しない場合は、機能性表示ができない。

◇複数の保健機能成分についてそれぞれ機能性を表示しようとする場合は、成分ごとに機能性を実証すればよいこととされる。

参照資料:平成26年5月2日 第5回 食品の新たな機能性表示制度に関する検討会
http://www.caa.go.jp/foods/index19.html

詳しくは、次号コラムにて触れていきたいと思います。


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川合 裕之
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2019)
【寄稿】
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~
・2014年~連載『季刊シール&ラベル』(日報ビジネス)食品表示にまつわるワンポイントアドバイス
・~2010年連載 『フードプラスワン』(日報アイビー)食品表示ワンポイントレッスン
・~2010年連載 『ヘルスケアマーケットレビュー』(大阪産業創造館)
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演実績
・2019年6月18日 輸出入食品における食品添加物の徹底研究~主要各国の食品添加物制度の調査と実務上のポイントについて~
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