「日本人の食事摂取基準(2020年版)」が公表されました ~栄養素等表示基準値の改定は見送りに~

By | 2020年6月9日
Pocket
LINEで送る

 2020年4月24日、消費者庁は「栄養素等表示基準値の改定に関する調査事業 報告書(以下「報告書」)」を公表しました。また1ヶ月前の3月27日に、食品表示基準、食品表示基準について(通知)、食品表示基準Q&Aがそれぞれ改正されておりますが、新しいニュースではない点をご了承ください。

【ポイント】

  • 2019年12月に「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の策定検討について報告され、その後、厚生労働省より公表されました。
  • 食品表示基準の「栄養素等表示基準値」は「日本人の食事摂取基準(2015年版)」を基に設定されています。
  • 消費者庁は「栄養素等表示基準値」等の見直しに関する検討を行い、結果、改定は行わないことになりました。

検討の背景


 栄養素等表示基準値※は、栄養強調表示や栄養機能食品の表示をする際に基礎となっているものです。改定が検討された背景については 「報告書」に整理されています。

 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)に規定している栄養素等表示基準値は、厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(以下「食事摂取基準」という。)(2015年版)」に基づき設定している。食事摂取基準に示された栄養素について、当該食事摂取基準を性及び年齢階級(18歳以上に限る。)ごとの人口により加重平均した値であり、食品に関する表示を行う際に用いる基準値として設定したものである。
 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会において、食事摂取基準の改定が検討され、平成31年3月22 日の第6回検討会を経て、食事摂取基準(2020年版)が公表された。
 栄養素等表示基準値については、食事摂取基準の改定箇所等を踏まえ、栄養機能食品の1日当たりの摂取目安量に含まれる機能に関する表示を行っている栄養成分の量の下限値及び上限値の一部並びに栄養強調表示の基準値の一部の設定の基礎となっている。
このため、本事業は、食事摂取基準(2020年版)の公表を踏まえ、栄養素等表示基準値等の見直しに関する検討を行うことを目的とした。

※「食品表示基準について(通知)」において、「栄養素等表示基準値とは、表示を目的として、食事摂取基準の基準値を日本人の人口に基づき加重平均したものであり、必ずしも個人が目指すべき1日当たりの栄養素等摂取量を示すものではない。」と記載されています。

検討結果


 「報告書」では、以下のとおり検討の結果について整理されています。

  • 食事摂取基準(2020年版)に基づく栄養素等表示基準値の改定は行わない。
  • ただし、その論拠を報告書に明記するとともに、国民の食品によるビタミンD※の摂取状況等を把握した上で、慎重に改定要否を検討する。

※栄養素等表示基準値の現行値と暫定値(食事摂取基準(2020年版)及び最新の人口推計値を用いて算出)を比較し、ビタミンDは差異が50%以上であったため、特に優先検討項目とされました。

 また、栄養素等表示基準値の改定は行わないこととされたため、栄養機能食品に含まれる栄養成分量の下限値及び上限値並びに栄養強調表示の基準値の改定についても、行わないこととされました。

 なお改定年次の表示については、検討委員より以下の指摘があったことが報告されています。

  • 事業者がどの時点の栄養素等表示基準値を参照して記載しているのか明確化し、消費者にその情報を伝えるためにも、栄養素等表示基準値の改定年次の表記が必要ではないか。
  • 栄養素等表示基準値の改定が行われなかった場合であっても、検討の結果、改定を行わない旨の判断がなされている。そのため、結果として改定が行われない場合であっても参照すべき年次の表記を行うことが必要ではないか。

「食品表示基準について」の改正内容


 これを受け、2020年3月27日に「食品表示基準について(通知)」が改正されました。栄養機能食品の表示に関する点を、「食品表示基準について 第十九次改正 新旧対照表」より以下に抜粋します。(改正により、右側下線部分が削除されています。「食事摂取基準(2015年版)」の記載を消すことで、2015年版、2020年版等の混乱をなくす意図と思われます。)

「栄養素等表示基準値の対象年齢及び基準熱量に関する文言」とは、「栄養素等表示基準値(18歳以上、基準熱量2,200kcal)」その他これに類する文言とする。

必要的表示事項である栄養素等表示基準値に対する割合、栄養素等表示基準値の対象年齢及び基準熱量に関する文言を表示した上で、小児や月経ありの女性等、特定の性・年齢階級を対象とした食事摂取基準を任意で表示することは差し支えない。その場合、出典を明記すること。

「栄養素等表示基準値の対象年齢及び基準熱量に関する文言」とは、「栄養素等表示基準値(18歳以上、基準熱量2,200kcal)」その他これに類する文言とする。

食品表示基準に基づき栄養素等表示基準値に関する表示をする場合、栄養表示基準との差別化を図るため、「栄養素等表示基準値(2015)」等、日本人の食事摂取基準(2015年版)を基にしていることが分かるような表示とすることが望ましい。

必要的表示事項である栄養素等表示基準値に対する割合、栄養素等表示基準値の対象年齢及び基準熱量に関する文言を表示した上で、小児や月経ありの女性等、特定の性・年齢階級を対象とした食事摂取基準を任意で表示することは差し支えない。その場合、出典を明記すること。

 その他、食品表示基準においては「栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨」についても改正があり、低い旨の表示は「基準値に満たない場合にすることができる」から「基準値以下である場合にすることができる」ことに変わっています。
 しばらくは当コラムでも新型コロナウイルス感染症関連のニュースを優先して掲載しておりましたが、3月27日の改正について確認されていない方は、一度目を通しておかれるとよいと思います。


食品表示作成・チェックサービス(国産食品、輸入食品):
国内で製造し国内で販売する食品、海外で製造し国内で販売する食品向けの食品表示サービスを提供しています。新しい食品表示基準への改版業務、現行のラベルのダブルチェック、添加物やアレルゲン等の社内チェック基準づくりをサポートいたします。
国内向けの食品表示作成・チェックサービスはこちら

食品表示チェック・翻訳サービス(海外向け、輸出食品):
国内で製造し海外で販売する食品、海外で製造し海外で販売する食品向けの食品表示サービスです。提供実績国数は約20ヵ国、各国現地の検査機関等との協業により、実態に沿ったラベルレビューや原材料リサーチ、翻訳をご提供いたします。
海外向けの食品表示チェック・翻訳サービスはこちら

Pocket
LINEで送る

The following two tabs change content below.
川合 裕之
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2019)
【寄稿】
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~
・2014年~連載『季刊シール&ラベル』(日報ビジネス)食品表示にまつわるワンポイントアドバイス
・~2010年連載 『フードプラスワン』(日報アイビー)食品表示ワンポイントレッスン
・~2010年連載 『ヘルスケアマーケットレビュー』(大阪産業創造館)
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演実績
・2020年9月17日 表示ミスを防ぐための食品表示実務のポイント~消費者の健康と安全・安心を守ろう~
 越谷市 保健医療部 保健所 生活衛生課様主催。
・2019年9月10日 新しい食品表示基準への対応と実務上の大切なポイント~添加物、アレルギー、栄養成分、原料原産地を中心に~
 山口県商工会連合会様主催。
・2019年7月10日、7月11日 食品表示基準に基づいた実務の重要なポイント
 奈良県観光土産品公正取引協議会様主催。
・2019年6月18日 輸出入食品における食品添加物の徹底研究~主要各国の食品添加物制度の調査と実務上のポイントについて~
 品質保証研究会様主催。
・2019年5月13日 新食品表示制度の基本~配合表を見ながら考える、新基準表示のチェックポイント~
 日報ビジネス株式会社様主催。
・2019年4月19日 表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント  日本食糧新聞社様主催。
・2019年2月26日 すべての加工食品が対象~原料原産地表示のポイントについて~
 兵庫県指定観光名産品協会様主催。
・2019年2月22日 食品表示作成・チェックにおける実務上の大切なポイント~アレルゲン、栄養成分、原料原産地表示などを間違えないために~  公益財団法人 山口県予防保健協会、山口県、一般社団法人 山口県食品衛生協会様主催。

>> 寄稿・コラムの詳細はこちら
>> 講演・セミナーの詳細はこちら