変わりゆく食品市場と各国における表示規制の動向について

By | 2019年11月8日
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 近年において、加工食品市場は国際規模で急速に成長しており、それに伴い新しいタイプの食品の出現や市場動向へすばやく順応するため食品表示規制を常に念頭におき、業務にあたることが求められます。日本においても、これらの変化に対し食品表示規制の改正が行われている昨今ですが、今回は世界に目を向けて、各国の規制の改正の現状を見てみたいと思います。

 定義から基本的な要件についての様々な法案や改正が注目されていますが、その中でも最も重要な点は義務的な表示事項である栄養成分表示、使用している原材料の表示、アレルギー表示ということになるでしょう。

 この記事では、欧米や東南アジアなど日本企業が興味を示している国々の食品表示に関して表で比較することで、各国の最新の通知についての情報を共有したいと思います。これらの改正を洞察し細かな部分にまで注意を払うと、社会、健康トレンド、消費者動向などによる要因は、その他の要因より優先されているものがあるということが顕著にわかると思います。
(以下文中に表示する括弧の数字は最後に記載の参照リンクの数字となります。)

1. 栄養成分表示について


 2018年度から2020年度にかけて、米国は技術、量、質、いずれの面(フォントサイズ、一食分の量、一日の摂取量、栄養成分の項目とそれぞれの表示値、脚注)も含めて、栄養成分表示に関する要件を最初に更新する国だと思われます。一方、EUはアルコール飲料メーカーからの自主規制案(QRコード、バーコードまたはその他スマートテクノロジーを使用し、原材料と栄養情報をラベルに表示させるかどうかについて合意したもの)を受領していますが(1)、その中の栄養成分表示はカロリーの値のみに限られる可能性があります。
 
 以下、米国についてより詳しく見てみましょう。

栄養成分表:米国
通知:2016年3月27日
状況:条件付経過措置期間
変更点:

上図:Changes to the Nutrition Facts Label (USDAウェブサイト)より(2)

 添加糖類の表示は各国において重大な関心事です。遊離糖類(単糖類、二糖類)、シロップやはちみつ由来の糖類、 一定の条件下で濃縮された果汁や野菜汁由来の糖類などを「添加糖類」として表示させる形で改正後に栄養成分表示に追加する米国がその表れといえるでしょう。
(参照資料:The declaration of Added Sugars applies also on Honey, Maple Syrup, and Certain Cranberry Products (3)
 
 さらには、多くの国では、糖類の消費を抑えることと、肥満や糖尿病の防止策として砂糖を含む飲料に砂糖税の導入を始めたということはご周知のことと思います。
結果として、企業は急いで自社の製品の配合を変更し、添加糖類の量を減らすということになります。消費者は価格に左右されることなく、より少ない添加糖類の同じ製品を購入することになるでしょう。(4)
 
 これら一連の栄養成分表示に関する改正について、米国政府の規制当局は、企業の規模、年間生産量、その製品がすでに流通しているという実態もしくは製品構成そのものなど多くの要因を鑑み猶予期間を設けています。(5)

2. 食品添加物について


 次に食品添加物は、研究室で日々新しい添加物が開発され、一方である一定の消費期間を経て新たに健康被害リスクが出たものに関して使用の制限を課すというように、常に変化する分野です。世界中で食品に関する規制の迅速な改正を耳にするのは背景にこのようなことがあるからといえるでしょう。

 以下、表示すべき添加物に対する警告通知をいくつか例にあげます。

インドネシア 1. 通知:2018年9月21日
状況:通知から30ヶ月の経過措置期間
変更点:(6)
– 食品添加物、天然甘味料または人工甘味料に関する情報やポリオール、アスパルテーム、着色料の含有に対する警告(article 24)
マレーシア 1. 通知:2017年
状況:施行(2018年4月15日)
変更点:(7)

  1. 没食子酸エピガロカテキン(EGCG)を含む食品ラベルについて:「妊娠中、授乳中の女性には推奨しません」
  2. ビタミンKを含有する乳児用ミルク、フォローアップミルクや子供用に処方された粉ミルク以外の食品について:「ビタミンKを含有しています、ワーファリンを飲んでいる方はこの製品を消費する前に医師に相談してください」

3. 強調および注意喚起表示について


 さらに強調表示や注意喚起表示について、以下の表において国ごとに整理したいと思います。

EU 4. 通知:2018年5月
状況:2021年1月1日まで経過措置期間
変更点:(8)
「オーガニック」という言葉は、「bio」や「eco」のような派生的な名称または通称は、EUのオーガニック製造規則に適合し、また農産物起源の原材料の少なくとも95%がオーガニックの製品のみラベルに表示することができる。
インドネシア 通知:2018年9月21日
状況:通知から30ヶ月の経過措置期間
変更点:(6)
ラベルには食品添加物の存在がないという情報を含めることが出来る(Article 24)

  1. 人工甘味料を含まない
  2. 保存料を含まない
  3. 人工着色料を含まない
  4. 酸化防止剤を含まない
    および/もしくは
  5. 調味料を含まない
ラベルには、以下の表示が必要
「遺伝子組換え製品」
「照射済み」
「豚を含む」

(豚肉を加工した施設で本製品を加工しています。
および/または 本製品は豚由来の物質と接触しています。)

タイ 通知:2019年3月19日
状況:保健省通知(案)
変更点:(9)
食品、(低温)殺菌牛乳および(低温)全脂肪殺菌牛乳ラベルに「プレミアム」という用語を使用することについて保健省(MOPH)は通知の取り消しを申し入れている
シンガポール 1. 通知:2019年8月30日
状況:2019年9月1日施行
変更点:(10)
乳糖フリーや低乳糖として販売されている製品について「乳糖フリー」や「低乳糖」もしくは類似する輸入品で使用されている表現を含まなければならない
乳児用ミルクまたは乳児用ミルクに含まれるいかなる原材料について、健康効果があること、または強化されていること、ある成分またはエネルギーまたは炭水化物の大きな供給源であること、母乳と比較すること(「ビタミンDを含む」または「鉄分に富む」もしくは「最新のものである」)などの強調表示、もしくはそれらを暗示してはならない

4. アレルギー表示について


 義務表示情報の中で最も重要な事項は、アレルゲンの表示です。事実、アレルゲンリストは国際的に未だに統一されておらず、各国のアレルギーの症例に基づき国ごとに違っています。加えて、そのリストを更新するには膨大な時間がかかります。主要なアレルゲン(穀物/乳(乳糖を含む)/卵/魚類/甲殻類/軟体動物類/落花生/大豆/木の実/亜硝酸塩など)とそれらを含む製品は、世界的に見ても共通していますが、シンガポールのように「グルテンを含む穀物」(小麦、ライ麦、大麦、オーツ、スペルト小麦、交雑株とそれらを使用した製品)という形で品目を一般化する国もあれば、日本のように「小麦、そば」と品目を細かく定めている国もあり、違いがみられます。

 可能性表示が禁止されている日本からみると戸惑うかもしれませんが、アレルゲンの表示方法は「含む」「含む可能性がある」がベースとなります。

 インドネシア政府の最新の通知の中では、アレルゲンの申告は下記のうち一つを表記しなければなりません。(6)

  1. 「…を加工した同一ラインで製造しています」
  2. アレルゲンの名前に続き、「…を含む可能性があります」 “May contain …”
    もしくは
  3. アレルゲンの名前に続き、「…を含む可能性があります」 “Can contain …”
  4.  

5. その他


 そして、ヨーロッパの2018年5月の原料原産地表示に関する通知(2020年3月まで移行期間)についても触れたいと思います。はちみつ、果物、野菜、オリーブオイル、水産品、牛肉、豚肉、羊肉、山羊肉、鶏肉がその義務表示対象となります。(11)(注意:日本では、食品表示基準において新たな原料原産地表示制度が施行され、経過措置期間は2022年3月末までです。)
消費者は、製品の“Made in …“という製造された国を指す「原産国」と、例えば、「ラム肉(ブラジル産)」のような“Made in …“の「原料『原産地』」を混同することが多々あると思いますので、この通知は消費者の利益を守り、偽装を防ぐための有効な方法だと思います。

 さらに遺伝子組換え製品または、遺伝子組換え原材料からできた製品に関しては、原材料が5%を超える遺伝子組換え原材料を1つでも含む製品に対して表示を義務化したベトナム(2018年2月2日に施行)のように(2~3の適用除外品目あり)、ほとんどの国の規制システムでは、このような遺伝子組換えの情報を徐々に義務表示とする動きがみられます。(12)

 最後に、食品規制と表示基準は、消費者の安全と健康を守り、誤認を避けるために、最近登場した「植物肉」のような新たに市場に出回る食品トレンドが起こるたびに更新されていきます。その例として、FDA(2019年9月4日施行)はひき肉代替品に使われる着色料として大豆レグヘモグロビンは未調理状態の製品重量の0.8%を超えてはならない(13)と通知を出しました。食品表示責任者、責任団体は、表示される情報への透明性、信頼性を保ちつつ、時代や急速な技術革新の流れを見落とさないことが重要だと思います。

参照:

  1. https://ec.europa.eu/food/safety/labelling_nutrition/labelling_legislation/alcohol_enhttps://ec.europa.eu/food/sites/food/files/safety/docs/fs_labelling-nutrition_legis_alcohol-self-regulatory-proposal_en.pdf
  2. https://www.fda.gov/food/food-labeling-nutrition/changes-nutrition-facts-label
  3. https://www.fda.gov/media/130373/download
  4. https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/260253/WHO-NMH-PND-16.5Rev.1-eng.pdf;jsessionid=27EFEE4A9FB8ED7BEFCF33CE8ABE0BAD?sequence=1
  5. https://www.fda.gov/food/food-labeling-nutrition/changes-nutrition-facts-label
  6. http://standarpangan.pom.go.id/dokumen/peraturan/2018/0._PerBPOM_31_Tahun_2018_Label_Pangan_Olahan_31_Jan_2019_Join.pdf#search=’%2828%29+http%3A%2F%2Fstandarpangan.pom.go.id%2Fdokumen%2Fperaturan%2F2018%2F0._PerBPOM_31_Tahun_2018_Label_Pangan_Olahan_31_Jan_2019_Join.pdf(インドネシア語)
    https://apps.fas.usda.gov/newgainapi/api/report/downloadreportbyfilename?filename=Food%20and%20Agricultural%20Import%20Regulations%20and%20Standards%20Report_Jakarta_Indonesia_3-18-2019.pdf(USDAによる英文要約)
  7. http://fsq.moh.gov.my/v6/xs/page.php?id=38
  8. https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32018R0848&from=EN
  9. https://members.wto.org/crnattachments/2019/TBT/THA/19_1557_00_x.pdf(タイ語のみ)
  10. https://sso.agc.gov.sg/SL-Supp/S580-2019/Published/20190830?DocDate=20190830
  11. https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX:32018R0775
    http://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/BRIE/2018/625182/EPRS_BRI(2018)625182_EN.pdf
  12. http://dof.qcrs.gov.mm/wp-content/uploads/2019/03/Decree-152018-ND-CP.pdf
  13. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2019-08-01/pdf/2019-16374.pdf

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イクラム
チュニジア出身。生物学を専門とし、海外の原材料、添加物、表示基準の調査業務に従事しています。また海外のお客様とのコミュニケーションを円滑にするサポート業務にも取り組んでいます。
趣味は料理。