米国とEUの食品表示基準に見る「複合原材料」の表示方法の日本との違いと注意点について

By | 2019年2月7日
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 昨今、世界各国では関税等の貿易における垣根を低くし、相互の製品を安く仕入れる様に出来る仕組みを取り入れる動きが益々加速する中、2019年2月1日より、日欧間の経済連携協定(EPA)が発効されました。
これにより今後はチーズ、チョコレートやビスケットといったヨーロッパの輸入食品についても段階的に関税が下げられていきますので、より安い価格での販売が可能になることでしょう。又、反対に欧州での和食人気を考えると輸出に対する期待も高まっています。

 そこで今回は、この様に今後食品の輸出入が増加傾向にあることを踏まえ、日本と海外の食品表示作成のルールの違いとその注意点に着目しました。加工食品に使用する「複合原材料」を例にとって説明してみたいと思います。

 日本では、複数の原材料から成る、いわゆる「複合原材料」を使用して製造する食品の場合、以下の例のように、当該原材料の名称の次に括弧を付し、これを構成する二次原材料を最も一般的な名称をもって表示することが基本となっています。
(参照根拠:食品表示基準Q&A 加工-51)

マヨネーズ(食用植物油脂、卵黄(卵を含む)、醸造酢、香辛料、食塩、砂糖)

 一方、以下の様な条件下であれば、複合原材料そのものを表示せず、これを構成する二次原材料を分割して表示することも認められています。
(参照根拠:食品表示基準Q&A 加工-52~53)

  • 分割した状態にしても性状に大きな変化がないこと
  • 複合原材料名が消費者の理解できる一般的な名前ではないか、単に二次原材料の混合されたもので、複合原材料としての表示にメリットがないこと

【一例】
「加糖卵黄(卵黄(卵を含む)、砂糖)」⇒「卵黄(卵を含む)、砂糖」との表示が可能

 又、この様な複合原材料については、上述のQ&Aにも「加工食品を仕入れて、それを原材料として使用する場合」という様に、仕入れて使用する加工原材料であることが前提となっています。

 では、他国において、この「複合原材料」はどの様に表示方法が定められているのか、EUとアメリカを例にとって見てみましょう。

【EUの場合(参照根拠:REGULATION (EU) No 1169/2011)】

(原文)
PART E — DESIGNATION OF COMPOUND INGREDIENTS
1. A compound ingredient may be included in the list of ingredients, under its own designation in so far as this is laid down by law or established by custom, in terms of its overall weight, and immediately followed by a list of its ingredients.

(要点のみ和訳)
慣習的に確立された名称であり、複合原材料全体の重量で表示されており、二次原材料をすぐ後ろに続けて記載すれば、複合原材料としての表示は任意で可能。

【米国の場合(参照根拠:FDA 21CFR101.4 Food; designation of ingredients.)】

(原文)
(b)-(2) An ingredient which itself contains two or more ingredients and which has an established common or usual name, conforms to a standard established pursuant to the Meat Inspection or Poultry Products Inspection Acts by the U.S. Department of Agriculture, or conforms to a definition and standard of identity established pursuant to section 401 of the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act, shall be designated in the statement of ingredients on the label of such food by either of the following alternatives:

(i) By declaring the established common or usual name of the ingredient followed by a parenthetical listing of all ingredients contained therein in descending order of predominance except that, if the ingredient is a food subject to a definition and standard of identity established in subchapter B of this chapter that has specific labeling provisions for optional ingredients, optional ingredients may be declared within the parenthetical listing in accordance with those provisions.

(ii) By incorporating into the statement of ingredients in descending order of predominance in the finished food, the common or usual name of every component of the ingredient without listing the ingredient itself.

(要点のみ和訳)
別途定めのない限り、一般的な名称を持つものであれば、以下のいずれかの方法で表示が可能。

  1. 一般的な名前に続けて括弧付きで最終製品における含有率の高い順に二次原材料を表記する。
  2. 複合原材料名は表示せず、その各二次原材料の一般的な名称を最終製品における含有率の高い順に表記する。

 上記の内容からお気付きの通り、EUにおいてもアメリカにおいても、一般的な名称を持つものであれば、複合原材料は、その原材料名を表示することが可能であり(但しこの場合、二次原材料を後ろに続けて記載することが日本と同様に必要)、又、複合原材料を分割して、その二次原材料の一般的な名称のみを表示することもアメリカでは可能であることが判ります。
又、日本の場合と異なり、どちらの場合も複合原材料が仕入れ原材料であるという前提の記載がありません。

 従って、特にアメリカから食品を輸入し販売される際に、該当食品の原材料が記載された規格書等を入手すると、表示上の記載が前提となっている場合、仕入れ原材料であっても複合原材料が既に二次原材料にまで分割して記載されている可能性があり、ラベルを作成される際に注意が必要です。この場合、現地サプライヤーには、当該原材料が仕入れ原材料であるかどうかと、もしその場合、日本では二次原材料を分割記載するのではなく、あくまでも複合原材料名を記載するのが基本ですので、どの原材料が何という複合原材料を構成しているかの詳細を確認することが、ラベル作成において必要となります。

 さて、今度は輸出の場合で考えてみましょう。うどんのトッピングにも使用される「天かす」を複合原材料とした米国向け食品があるとします。
そもそも「天かす」というもの自体が米国で馴染みのないものであり、この場合、結果として各二次原材料である「小麦粉」や「植物油脂」などを分割して表記することになります。これは「天かす」が仕入れ原材料であることを考えると、日本の食品表示基準上と全く異なることが分かります。
米国では、原材料名が一般的ではない「複合原材料」は、仕入れ原材料如何を問わず分割して表記しなければならない場合がありますので、こちらもラベル作成の際には注意が必要です。

 今回は米国・EUと日本の食品表示基準の違いの違いをご紹介して参りましたが、これらはほんの一部であり、輸出入いずれの食品表示作成においては他にも多くの相違点があり、日頃からこれらに着目しておく必要があります。
無論、米国・EU以外の世界各国においても日本とは異なる表示基準が数多く存在していることは言うまでもありません。


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亀山 明一
添加物製剤の業界に長く在籍した経験を活かし、添加物の調査業務を中心に、調査結果の英文と日本語との整合性確認業務に従事しています。また原材料の使用基準や食品表示基準などについて、英語でのセミナー講師も担当しています。
趣味は外国文化に触れることと旅行。